こんにちは。
ナチュラル薬膳生活文化普及協会理事長、薬膳ライフコーチ須崎桂子けいてぃーです♪
これまで薬剤師、看護師、料理教室の先生、エステティシャン、薬膳の専門家になりたい大人女性のみなさんに、本格的な薬膳コースをオリジナルテキストで十数年教え続けてきた実績を持っています。
今回はヘルシーな薬膳クッキングにフランス料理のテイストを加える「フレンチック薬膳ライフへの道」をご案内いたしますね。
まず、薬膳の先生が「フレンチック薬膳ライフ」という新たな食生活の愉しみを家庭薬膳で模索し始めたわけを語ります。
それからこの「おいしいブログ」のタイトル、フランス料理の調理法のひとつ、suer(シュエ)という手法をフランス料理の先生から教えて頂いたのをきっかけに、薬膳フードセラピーへどう応用しようかと愉しく模索している様子をレポートします。
和モダンフレンチが誘う「フレンチック薬膳ライフ」への道
「ナチュラル薬膳生活(薬膳ライフ)」はフードセラピーの目的さえ合っていれば、中華料理の形式にとらわれず和食はもちろん、家庭的なフランス料理の調理法も取り入れて食生活を心豊かに楽しみます。
なぜならフランス料理は、食事だけでなく少しずつ運ばれてくるお料理を目で楽しみ、舌で味わい、一緒に食べる人たちと交流しながら、ゆっくりお食事を愉しむesprit(エスプリ)、英語ならspiritに近いでしょうか)、魂のごちそう要素がたくさん詰まっているからです。
物理的に食物を摂って空腹を満たす以上に、食事そのものを味わい愉しむことで、日々の暮らしを心豊かに過ごすことが、ひいては免疫系を強化して「陰陽ホメオスタシスのネットワークシステム」のバランスが整い病気しにくい心と身体を育みます。
これこそが、人生を健やかに200%味わい尽くしたい大人女性がムリなく普段の生活で、健康寿命100%に少しでも近づいていく薬膳ライフ、究極の理想の暮らし方。
だから薬膳教室のオーナー講師になるよりずっと前、会社勤めの営業ウーマンだった10数年以上前から、格式ばっていないビストロのフランス料理教室でシェフから直接教えてもらっていました。
シェフに秋刀魚のさばき方から丁寧に教えて頂いたのは、懐かしい思い出です。
そして昨年から久々に、フランスの調理学校で修業経験のあるベテランの磯貝由恵先生から、「和モダンフレンチ」という新発想のフランス料理を学んでいます。
消化を助ける薬膳素材になるヘルシーな日本の発酵食品の酒粕を、同じくフランスの発酵食品であるチーズの代わりに組み合わせたり、グルメなフランスの料理哲学とともに調理法の科学もしっかり教えてくださるからです。
磯貝先生のオリジナリティー豊かな「和モダンフレンチ」に触発されて、現在が愉しみ始めたのが「フレンチック薬膳ライフ」。
わたくしはフランス語は習ったことがありません。
フランスには2008年に薬膳教室を開業した直前に1回行ったきりです。
しかもアルコールを身体が受け付けなくなって、大好きだったワインを飲むのをほとんど止めてしまい、ここのところ脱アルコール清涼飲料のヴェリタスがお気に入りです。
ですからまずは、【魂(エスプリ!)のごちそう薬膳ライフ】スタイルで、フランス料理の調理法を「カレと愉しむ♡心身ほっこりおうち薬膳」から「フレンチック薬膳ライフ」と命名して隠れ家っぽく施し始めています。
このお正月もノンアル赤ワインと一緒に、教えて頂いた「発酵ソースで愉しむローストビーフ」を、消化を助けつつ気血を補う薬膳「紅白なます巻きローストビーフ」にアレンジして、家族とおいしくおせち料理を囲み舌鼓を打ちました。
年末年始はごちそう続きでどうしても糖質を摂り過ぎてしまうから、同時にデトックス系で消化を助ける大根などをふんだんに組み合わせて、たくさん食べましたがおいしくヘルシーにお正月を過ごしました。
フレンチの調理法 suer(シュエ)薬膳素材を発汗に想う
フランス料理のレッスンを重ねるうち、思った通りフランス料理にはお味や見た目はもちろん、調理法についても相当なこだわりがあるのが分かってきました。
しかも先生が毎回、お料理の道具を使いながらその調理法をesprit(エスプリ)が利いた豊かなフランスの表現で伝授してくださるのが非常に興味深いです。
とにかく、フランスのシェフ達があちらで使っているという調理法のイキイキした言い回しには、なるほど!と感心してしまいます。
さすがフランスはグルメと芸術のお国柄。
こうして習っているたくさんの調理法のうち、今、気に入っているのは、「suer(シュエ)」という炒めるときに使う表現です。
最初から塩を加えてじっくり弱火で野菜がしんなりするまで炒めているときに、「suer(シュエ)、これは汗をかくように炒めるときに使う表現なの。」と教えていただき、面白いなあと思いました。
例えばこんな風に長葱たちが汗をかいて「しなしな」になっていく様子が見てとれたからです。
「汗をかくように炒めるのは、野菜の旨味をじっくり引き出すためなの。だから味見してみて、ほら!ぜんぜん葱臭くないでしょう?」といわれて発汗した長葱をちょっと食べてみました。
すると確かに長葱特有のイオウ化合物のアリシンや精油成分のネギオールの辛味や刺激臭いはすっかりなくなり、甘くておいしい!
中医薬膳学的にいう発散系の辛味はみじんもありません。
そして発汗してすっかりしなしなになった長葱たちは、野菜の甘味とコクが十分に引き出されたオーブン焼きのスープになったのでした。
その熱々スープをはふはふ言いながら試食させて頂いたら、お腹の中から身体がポカポカになりました。
こんな風に、suer(シュエ)の炒め方は、野菜の旨味をじっくり引き出すため。
比較として、中華料理のプロのコックさんが鉄鍋に食材を入れて、プロパンの強火であおるように手早に炒めるのとは違うと、例を挙げてくださいました。
が、それはsuer(シュエ)とは逆に食材の野菜などの水分を高速に飛ばしてシャキシャキ感を残すため。
どちらの調理法の方がいいという問題ではありません。
大切なポイントは、完成したお料理で得たい味わいや歯ごたえやおいしさの楽しみ方、それぞれの目的によってそれに合う調理法を選んで、火の入れ方から調味料を入れるタイミングまで、一連のプロセス全てへのこだわり。
それはまるで、一人ひとりに合わせてテイラーメイドの治療を施す中医診断学、見立て➡分析➡治療のようです。
中医薬膳学なら食べる人の体質・住んでいる風土地域・その時の天候のコンディションに合わせて、状況を見立て➡食べる人の目的にふさわしい薬膳処方を分析➡分析結果に合う薬膳レシピを組み立てて食べてもらう、という流れにそっくりだから。
【魂のごちそう薬膳素材】 長葱の緑の部分と白い部分の活用法
それにしても長葱など、薬膳素材となる身近な日本の食材が和モダンフレンチのレシピに出てくるのは、薬膳講師としては研究材料としてとても嬉しいことです。
例えば長葱ならば、その調理法で薬膳的な見地から薬理作用が変化するのを、はっきり見て取るいいチャンスでもあったからです。
ナチュラル薬膳生活文化普及協会は、薬膳フードセラピーの暮らしを始める皆さんが薬膳素材を理解しやすいように独自の分類体系を設けて、ナチュラル薬膳生活専門家養成コースの公式テキストの「薬膳素材辞典」に収載しています。
実は長葱の緑の部分と白い部分(葱白・そうはく)は、分類は同じ「体温調節系」の「辛温解表類」なのですが、「作用」だけそれぞれ異なる記載になっています。
長葱の働きを中医薬膳学で見てみると・・・
◎体温に対する作用は、緑も白も身体を温める「温性」の性質です。
◎味性は、緑も白も身体の表面から水毒を発汗発散させたり、外から皮膚や呼吸器を通じて体内に入ってこようとする菌・ウイルス・有害物質を吹き飛ばしたり、体内の循環を良くする辛味です。
◎緑も白も、呼吸器系統の肺と、消化器系統の胃に働きかけます。
◎緑は、身体の表面から毒素を飛ばしてデトックスする「解表(げひょう)」と「解毒(げどく)」の作用があります。また、急性病の初期の段階で取り除く「去風(きょふう)」、体内に生じた病的なぶよっとした水毒の塊を取り除く「消腫(しょうしゅ)」の働きがあります。
◎葱白は、発汗させて解毒を促す「発汗解表(はっかんげひょう)」という作用があります。
◎葱白は、「散寒通陽(さんかんつうよう)」という身体の中に生じた冷えを取り除いて、体内を温める陽の気の通り道の循環を良くします。
◎葱白は、「解毒散結(げどくさんけつ)」という体内に生じた毒素の塊をほぐして解毒する作用があります。
葱白(そうはく)禁忌・注意は、
◎発汗を促すのでたくさん汗が出ている急性病のときには向きません。
長葱の補足説明としては、
カゼの初期症状のケアまたは冷え症の改善という異なる目的で薬膳作りに活かしたい場合、調理方法に注意が必要です。
上述のとおり長葱は緑の部分も白い部分も身体の表面を辛味でさっと温めて、身体の表面に近い部分の毒素を発汗で外に出したり、外界から体表にやって来た急性病を引き起こす菌やウイルスを吹き飛ばして病気が発症しないように初期段階で治療したり予防したりします。
こうした発散したり、体内の循環を良くする長葱の有効成分は、辛味を持つアリシンやネギオールなどの硫黄化合物や精油成分によるものです。
ですから、長葱をカゼの初期のケアに使いたい場合は、短い調理時間でさっと加熱するか、生のままみじん切りにして、お料理のトッピングにしたり、お味噌汁に入れて薬膳フードセラピーを行います。
長葱をsuer(シュエ)の調理法で、汗をかかせてしんなりするまでじっくり炒めて、辛味を感じなくなるまでじっくり加熱すると、身体の表面から病気の原因を吹き飛ばす作用よりも、身体の中をじっくり温める働きのほうが強まるように感じます。
もともと、食べる人を発汗させて解毒する働きのある辛温解表類の長葱。
その長葱自体をsuer(シュエ)で汗をかかせて発汗させて辛み成分を緩和するというこの調理法が、フランス料理のひとつのやり方として確立していて、このように大きなこだわりになっているのが本当に興味深いと思いました。
ですから厳密にいうと、カゼの初期症状のケアか、冷え症のケアか、はっきりした薬膳フードセラピーの目的があれば、それに応じて加熱調理の時間を短くするか長くするか調整しながら、家庭薬膳フードセラピーの臨床で薬効を確認するとよいでしょう。
長葱については、薬膳講師が自ら執筆した公式テキストでもご参照頂けます。
人生を200%味わい尽くしたい大人女性の健美活に!「ナチュラル薬膳生活®(薬膳ライフ)」をどうぞお役立てください。
営養補給系 辛温解表類 葱白 (そうはく 葱の白い部分) *体温への作用・味の性質・臓腑への働きかけ・作用* 温 辛 肺胃 発汗解表 散寒通陽 解毒散結 *栄養素・生理機能成分* 栄養素・生理機能成分 カリウム カルシウム アリシン(イオウ化合物) ネギオール(精油成分) |
参考文献
『ナチュラル薬膳生活入門編』 p.84
【前期】コーディネーター養成コース 公式テキスト
『ナチュラル薬膳生活応用編』 p.128
【後期】アドバイザー養成コース 公式テキスト
須崎桂子
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