こんにちは。
ナチュラル薬膳生活文化普及協会理事長、薬膳ライフコーチ須崎桂子けいてぃーです♪
これまで薬剤師、看護師、料理教室の先生、エステティシャン、薬膳の専門家になりたい大人女性のみなさんに、本格的な薬膳コースをオリジナルテキストで十数年教え続けてきた実績を持っています。
今日は本格薬膳コースの理論レッスンにて生徒さんから、中国伝統医学(中医学)の五行説に触れていたときに、「唾(つば)と涎(よだれ)の違い」がどうもよく分からないと聞かれました。
なぜこのようなご質問が出たのかその背景と、わたくしがどうお答えしたのか、本格薬膳のお勉強に興味のある皆さんの参考にご紹介させて頂きます。
「唾(つば)と涎(よだれ)」の違いを聞かれた理由
薬膳の生徒さんが「唾(つば)と涎(よだれ)の違い」を疑問に思った理由は、前々回の中医学の理論レッスンで、中医内科学的にいう脾(ひ)という消化器系統の臓器に関連して、涎(よだれ)の働きと病気についてすでに学んでいたからです。
今日、腎(じん)という中医学では生殖や泌尿器系統に関りが深い臓器に関連して、唾(つば)の働きと病気を学んだけれど、涎(よだれ)とほとんど変わりなかったので何が違うのか混乱した様子でした。
わたくしも、「確かにそうですね。実は唾と涎はあまりよく違いが分からないのです。」とお答えして、折り返しご説明することにしたのです。
このように本格薬膳の専門家養成コースの理論レッスンでは、薬膳フードセラピー例を学ぶ調理レッスンだけでなく、薬膳の考え方の裏打ちとなる中医学理論も並行してレクチャーするカリキュラム構成になっています。
今回は、カリキュラムの【後期】アドバイザー養成コースの理論レッスンで、中医内科学的にいう臓器の働きと病気について様々な角度からご説明していたところでした。
【後期】では内臓の働きと病気のことを、中国古代哲学の五行学説の知見も含めて【前期】よりさらに詳しく深めて学びます。
五行学説というのは、森羅万象を「木・火・土・金・水」の5つの「行(ぎょう)」というカテゴリーに分けて、同じような性質を持つモノやコトをそれぞれのカテゴリーに分類する考え方です。
そして五行学説は上記の図のように矢印の星型で示したような影響の流れや法則があり、それぞれのカテゴリーの行どうしには相関関係があるととらえています。
今回は水行(すいぎょう)に属する五臓(五種類の臓)のうち「腎」にフォーカスする中医学理論のレッスンでした。
何と五行学説ではわたくし達の身体を満たしている液体、体液さえも五液(五種類の液)に分類されています。
そして、唾(つば)は「腎(じん)」と同じ水行に、涎(よだれ)は脾と同じ土行に属しているのです。
五行学説 | 五臓 | 五液 |
水行 |
腎 じん |
唾 つば |
土行 |
脾 ひ |
涎 よだれ |
しかし、唾と涎は違うカテゴリーに分類されてはいるものの、どちらも唾液ですし口に入ってきた食べ物を最初に消化するのが主な働きなのでわざわざ分けた理由が不明なのです。
中医学では、あるカテゴリーの内臓や器官が病気になると同じ属性の他の生理機能に問題が出やすいと考えます。
例えば、腎が失調すると唾の分泌、脾が失調すると涎の分泌が多すぎたり不足したりするので、初期の消化に何らかの支障が出る可能性があるといわれています。
唾も涎も同じ唾液ではあるものの、その健やかな分泌に関しては、腎も脾も関与しているという風に考えるのが妥当なのかもしれません。
わたくしは本格薬膳コーステキストの『ナチュラル薬膳生活入門編』と『ナチュラル薬膳生活応用編』を執筆したとき、五行学説に絡んで唾と涎の働きについては日本や中国の中医学の専門家の著作物を参考文献にしました。
その際、中医学は素朴な古代の人々の自然観に基づいている中国古代哲学が根幹で、抽象的な理論が多く含まれるため、初心者の方に分かりやすく説明するテキストを作るのは簡単ではないと感じていました。
わたくしも生徒さんと同じように、何でわざわざ唾と涎を別の分類にしたのかなと疑問に思いながら、リサーチを重ねて薬膳テキストを編纂していました。
結局、唾と涎をなぜ中医学の先人が五行で分けたのか明快な答えは見つけられないまま、本格薬膳テキストを2冊出版。
とにかく、五行学説はユニバーサルに体系化されているので、五液の属性をわたくしの一存で変更することはできません。
ですから薬膳学校で習ったり、リサーチした中医学の有名な書籍と同じように五行の相関関係図を薬膳テキストに記載しました。
しかし今回、わたくしのもとで薬膳ライフを1年学んだ生徒さんが唾と涎の違いが分からないと、困った様子なのを拝見して、唾と涎について改めて考察して私見をまとめておくべきかと感じた次第です。
唾(つば)と涎(よだれ)についての私見
そこであくまでわたくしの想像の域を超えないのですが、唾と涎について考察するのには、まず、それぞれの出て来かたが異なる点、そして現代生理学で考えれば唾も涎も同じ唾液であり、唾液には初期消化以外にも様々な働きがあることを理解しておくのがよいと思います。
唾と涎は出て来かたが違う
唾は自然に口の中に湧いてきたりわたくし達が「意識的に」吐き出したりする唾液です。
ですから、口の中を潤して初期消化を助けるだけでなく、不要な水分や口の中の異物を外にデトックスする作用も果たします。
口の中に溜まった唾液や異物をを要らないと思えば、わたくし達はそれを吐き出しますが、それが唾と呼ばれているというわけです。
中医学的な腎には様々な機能がありますが、利尿作用などデトックスに関わる泌尿器系の部分が含まれます。
同じ唾液を唾と呼び腎に結びつけることで、口の中をきれいに保つ働きなどに着目しているのかもしれません。
一方、涎は自然に口の中に湧いてきた唾が「無意識に」口から流れ出る唾液です。
涎はシンプルに初期消化に必要な消化酵素のアミラーゼなどを含む唾液であり、食欲が湧いてくると分泌が高まるという解釈でよいでしょう。
もちろん、涎が度を越して口から溢れ出るほど量が増えてしまったら、それは生理現象を超えた病気の状態とみなされます。
こうした病理の現象が見られたならば、中医学では間接的に消化器系統の「脾」の働きを整える治療法を選択することになります。
例えば今日は午後の理論レッスンの前に、午前中は薬膳調理レッスンがありました。
薬膳スープの香りをお皿に盛りつけながら嗅ぎ、テーブルに運んで席に着いて食べる前から、唾ではなく涎が出そうでした。
もちろん大変美味しくて全員完食しましたが、こうした場合に自然に湧いてくる唾液のことをわたくしたちは、唾ではなく涎と表現します。
そしてこの場合、涎として表現されている唾液の主な働きは、食べ物を美味しく消化する働きということになります。
唾も涎も現代生理学では唾液
これまで見てきたように中医学の五行学説の五液として唾や唾液を比較すると、唾はデトックスで口の中をきれいにする働き、涎は食べ物を初期消化する働きに重きがおかれているようにも見えます。
しかし現代生理学では唾も涎も同じ唾液です。
唾液の働きはすでに考察した中医学的に見た作用と重複していて、消化・洗浄・デトックス・殺菌・虫歯予防・口腔を潤して保護する作用を持っています。
中医学では、唾や涎の分泌が足りないと消化に影響が出ることが主に問題にされていますが、現代生理学ではさらに口の中を清潔に保つことができなくなるので口内炎や虫歯にかかりやすくなると言われています。
中医学の五行学説では水行に属する腎と同じ五体(五種類の身体組織)は骨であり、「歯は骨の余り」とも言われています。
ですから、唾液の働きの中で歯の健康に関わる部分は、間接的に腎とのつながりが深いとも言うことができるでしょう。
先人は経験則で唾液の分泌が腎の働きと関係が深く、骨の一部である歯の健康を左右すると考えていたのかもしれません。
余談ですが、中医学の養生法のひとつである気功の運動には、口を閉じたまま自分の舌を回しながら歯の裏側をなめて唾液の分泌を促して健康管理に活かす方法があります。
そして、口の中に溜まった唾液を「金水(貴重な水分という意味)」といい、三度に分けてごくりと飲み込むのです。
こうした先人の知恵で伝えられてきた養生法からも、唾液が如何に健康に大切か先人が知っていて、それを後世に伝えてくれたことが分かります。
まとめ 本格薬膳レッスンでのご質問「唾(つば)と涎(よだれ)の違いは?」
これまで見てきたように、中医学理論の礎となっている五行学説でなぜ唾と涎が違うカテゴリーに分類されて、それぞれ、水行の腎と土行の脾に結び付けられているのかはよく分かっていません。
なぜなら唾も涎も両方とも唾液だからです。
しかし、中医学と現代生理学の二つの知見から唾と涎を考えると、唾液のもつ様々な働きのうち、口の中をデトックスしてきれいに保つのは、より水行の腎の排泄や骨(歯)を守る作用に関係が深く、口に入った食べ物を初期消化する働きは、より土行の脾の消化吸収の作用に関係が深いと言えそうです。
現在のところは唾と涎の違いについては、このように私見を交えたご説明になりますが、後程、新たに納得できる分かりやすい見解が出てきたらまたまた生徒さんや皆さんと分かち合いたいと思います。
このように、 薬膳ライフコーチは生徒さん達からご質問を受けましたら、これまでの経験やリサーチをもとに出来る限りお答えして、生徒さん達がひとりで薬膳フードセラピーをできるように導いていきます。
新型コロナウイルスの感染拡大が世界的な問題になっていますが、こうした時こそ未来に備えて先人の知恵に学び現代医学や現代栄養学も交えながら、ライフスタイル医学の暮らし方「薬膳ライフ」のはじめどきです。
世界のグローバル化が進む現代社会においては、さらなる未知の感染症のリスクなどに備えて、わたくしたちも家庭の医学知識は必須のものとなっていくことでしょう。
リアル対面の薬膳レッスンの重要性を理解しつつも、外出自粛の勧告が長引いたりや首都封鎖が現実になった場合でもZOOMオンラインに一時的に切り替えて薬膳の学びを中断することなく続けて行ける体制を整えています。
須崎桂子
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