こんにちは。
ナチュラル薬膳生活文化普及協会理事長、薬膳ライフコーチ須崎桂子けいてぃーです♪
これまで薬剤師、看護師、料理教室の先生、エステティシャン、薬膳の専門家になりたい大人女性のみなさんに、本格的な薬膳コースをオリジナルテキストで十数年教え続けてきた実績を持っています。
薬膳ライフを豊かにする「けいてぃーさんのナチュラル薬膳生活」のひとこま。
昨日ご紹介した気(生体エネルギー)と陰(身体の潤い成分)をチャージする家庭薬膳「しっとり鶏むね肉の白ワイン蒸し ストロベリージンジャーソース」について引き続きレポートします。
苺の保湿作用で美人になる薬膳レシピを作っていたら、思いがけず「無塩で美味しい」生活習慣病ケアにも役立つセレンディピティな処方ができたものですから。
こんな風に、まいにちの食事作りで薬膳レシピを愉しく考案する、薬膳ライフ研究の様子をお届けいたします。
鹹味(かんみ・中国語でしょっぱい味の意)
薬膳を勉強すると必ずたくさん出てくる中国の漢字は悩ましいものですよね。
日本語で使われていない漢字はパソコンで文字変換してもなかなか出てこないので、単語登録がとても煩雑です。
そんな漢字の中でも薬膳の初心者の生徒さん達が最初に目にするのは、味性(みせい・味の性質)を意味する言葉のうち、”しょっぱい”を表す「鹹(かん)」ではないでしょうか。
『ナチュラル薬膳生活入門編』テキストを見ても小さくて一体どういう字なのか分からない、と生徒さん達からいわれることが多いので(スミマセン・・・)、
鹹 xián
と、大きくホワイトボードに書いてお示しすることが多いです。
「xián」は中国語で読むときのピンイン(拼音)という発音表記です。
中医薬膳学では、薬膳素材となる食物には六味のうち、いずれかの味の性質があって、それが食べた後に身体に何らかの作用を及ぼすと考えるのです。
塩はしょっぱいのでお味の性質は、「鹹」です。
薬膳理論のモトとなっている中国伝統医学(中医学)的で見ると、鹹味の主な働きは、身体を冷まして中に溜まった老廃物のデトックスです。
現代栄養学的に塩を捉えれば、命を繋ぐのに不可欠なミネラルの化合物、塩化ナトリウム(NaCl)ですね。
そして塩の成分のほとんどは、ナトリウムです。
昨日のブログでもご紹介した私たちの体液全般の陰(陰液)や血(けつ)にも塩分は含まれています。
そして身体の潤いが細胞組織の中でしっかりと貯えられたり代謝されたりするように、浸透圧の調整するほか、神経伝達のメカニズムなどにも関わって健やかな生命活動を支えています。
このように生命維持に欠かせない塩ですが、飽食の現代社会ではナトリウムの摂りすぎによる高血圧症などの生活習慣病になる人たちが増えて、社会保障の医療費の増大など大きな社会問題になっていますね。
薬膳の源である中国古代哲学や中国伝統医学が発祥した頃、塩は貴重品で解毒するときに吐かせたりするのにも使う中薬(ちゅうやく・日本漢方では生薬といいます。)でもありました。
でも今は塩は大量生産されて安く手に入るようになり、濃い塩味でおいしく感じさせる加工食品や外食を食べる人たちが多い時代になりました。
文部科学省・厚生労働省・農林水産省といった政府省庁によると、日本人の食事摂取基準(2015年版)における食塩摂取量の目標値は、1日当たり男性で8g未満、女性で7g未満とされています。
しかし日本人の食塩摂取量は、2016年現在10.0gと、摂りすぎの状況にあります。
参考文献: 文部科学省・厚生労働省・農林水産省 2016年6月 「食生活指針の解説要領」
無塩でも美味!チキンと苺のマリアージュ薬膳
このように食塩は命を繋ぐのに必要なミネラルではありますが、摂りすぎると血脈(けつみゃく)の細胞壁(血管壁)を損なうので、現代社会では摂取量のコントロールが喫緊の課題です。
こうした状況を踏まえて薬膳ライフでは、下ごしらえも含めて調理するたび、食材を塩もみしたり、塩ゆでしたりするプロセスをなるべく無塩でおいしくできないか、普段から気をつけて生活しています。
すると無意識のうちに生活習慣病ケアに役立つ薬膳フードセラピーが誕生する場合があります。
昨日のブログに書いた、気(生体エネルギー)や陰液(潤い成分)を身体に補給する薬膳「しっとり鶏むね肉の白ワイン蒸し ストロベリージンジャーソース」を作ったときもそうでした。
別段、無塩で高血圧をケアする薬膳フードセラピーを考案しようと意図的に取り組んでいたワケではないのです。
まず、脂質異常症の予防・治療にも活かしたかったので、余計な脂質を除くべく400gの鶏むね肉からいつものとおり皮をはぎ取りました。
これは鶏肉の皮を敵視しているのではなく、一緒に食べる家族の中性脂肪値が上がり過ぎないように気を配っているからです。
成長が著しい年代や病後の快復期の方は、脂質を敢えて摂ることで細胞を作ったり蘇らせる必要がありますから、ご自身のライフステージやコンディションによって鶏肉の皮や脂肪を使うか取り除くのかを決めるのです。
それから、「酸甘化陰(さんかんかいん)」という、酸味と甘味を合わせて潤いを生み出す手法を使いました。
「酸甘化陰(さんかんかいん)」というのは、酸味と甘味を組み合わせると身体を潤す陰(陰液)を生む効果が生まれるという、中医学理論の教えです。
鶏むね肉をしっとりした口当たりに仕上げるために、この手法を使って蜂蜜と純米酢をそれぞれ小さじ2杯ずつまぶして5時間くらい冷蔵庫の中でマリネしました。
白ワインを振りましたが、そういえば塩は加えないでやってみようと思い、塩は加えずに水けを拭いて蒸し焼きにしたのです。
それから、鶏肉を取り出して蒸し汁でカットした苺の果肉・生姜汁・柔らかく水で戻した陳皮(無農薬の温州みかんの皮)の千切りを加えて煮つめて鶏肉にかけるソースにしただけ。
ストロベリージンジャーソースに塩は加えていません。
それなのになぜか、お口にほおばると鶏肉の旨味と共にかすかな塩味を感じる魔法薬膳!
昨日のブログにも書きましたが、「皮なしの鶏むね肉」には、ナトリウムが34mg(生・可食部・100g当たり)含まれていますから、苺の甘味が鶏肉の塩味をうまく引き出した結果ではないかなと考察しています。
参考データ: 「文部科学省食品成分データベース」
こうしたさりげない薬膳ライフの知恵が皆さんのお身体だけでなく、生活を心豊かに彩るお役に立てば嬉しいです。
塩については、薬膳講師が執筆した公式テキストにてご参照頂けます。
体温調節系 清熱類 塩 *体温への作用・味の性質・臓腑への働きかけ・作用* 寒 鹹 腎小腸胃大腸 清熱涼血 解毒湧吐 *栄養素・生理機能成分* ナトリウム カリウム カルシウム マグネシウム |
参考文献
『ナチュラル薬膳生活入門編』 p.91
【前期】コーディネーター養成コース 公式テキスト
『ナチュラル薬膳生活応用編』 p.132
【後期】アドバイザー養成コース 公式テキスト
須崎桂子
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