こんにちは。
ナチュラル薬膳生活文化普及協会理事長、薬膳ライフコーチ須崎桂子けいてぃーです♪
これまで薬剤師、看護師、料理教室の先生、エステティシャン、薬膳の専門家になりたい大人女性のみなさんに、本格的な薬膳コースをオリジナルテキストで十数年教え続けてきた実績を持っています。
終活サポートにココロを癒すシトラスの香りの家庭薬膳
3月の梅が散り始め桜の開花予報が聞かれるようになったこの時節、家庭薬膳で義母の終活をサポートするため夫とともに夫の実家を再び訪れました。
終活サポートの家庭薬膳は、シニアの方が現代西洋医学の治療が効かなくなっても、食事が摂れる状態である限り、ムリのない範囲でおうちで愉しめる中医学の食事療法です。
今回は残されたイノチに前向きに取り組んでいる義母に食べてもらった最期の家庭薬膳を紹介します。
薬膳フードセラピーはそもそも、変わりゆく状況に合わせて、処方を変えていく食事療法です。
ですから、臓腑の機能が次第に弱くなっていくことが予想されるケースでは、それに合わせて様子を見ながら、消化吸収にかける負担が少ない薬膳素材や調理法を選んでいくことになります。
今、見られる症状は、明日には変わってしまうかもしれません。病院のお食事では一律に大量の食事を作るので、食べる人ひとりひとりの状態に合わせて、こまめにレシピを調整するのはとても難しいです。
でも家庭薬膳には、ちょっとずつ調整してほんの少しでも美味しく食べられるよう様子を見ながら調整できるメリットがあります。
最期まで家族と味わえる薬膳フードセラピー
【薬膳レシピ開発】終活サポートに小豆と生姜で家庭薬膳では、「小豆」のあっさりした薬膳スイーツでむくみの改善を試みました。
しかし今回は、もう身体をあまり動かすことができなくなってしまっても、消化器系統である脾(ひ)がともともと丈夫であったせいでしょうか。
家族と同じ普通の食事を少量でも食べたいという気力を感じました。
そこで、義母が倒れる前の夕食に作った椎茸と人参のお味噌汁の残りを、義父が見せてくれたので、冷蔵庫にあったうどんと合わせて、彩りにスナップえんどうをあしらいました。
すると、介助を受けながら義母は少しずつ美味しそうに、わたくし達と一緒に食べてくれました。
介護するご家族にも食べてほしいココロを癒す家庭薬膳
ナチュラル薬膳生活は、食事療法による不調の予防や治療だけでなく、楽しい食卓の雰囲気作りも、家族のココロとカラダを健やかにする大切な要素だと考えます。
なぜって?
それは、ココロが安らぐと恒常性ネットワーク(ホメオスターシス)が自然と整ってくるので、ホメオスターシスの一翼を担っている免疫系のバランスも整うからです。
しかし、自宅で終活サポートを行うと決め、充実した地域の介護サポートを受けていても、介護を行うご家族や介護を受けるご本人も、四六時中気が張っていてココロを休めるのはとても難しいです。
こうした状況のもとでも、介護する家族は毎日の食事を必ず摂る必要があります。
そんなときに家庭薬膳を知っていると、凝った料理をしなくても先人の知恵で、ある程度ストレスを軽くすることができます。
ちょうど台所にいよかんがたくさんあったので、もう1品、柑橘類のシトラスの香りを介護ストレスで疲れ果てている義父を癒す薬膳に使ってみようと思いました。
別に柑橘類でなくてもいいのですが、芳香性の薬膳素材にはココロに働きかけて「気(き)生体エネルギー)」の巡りを高め、間接的にココロの癒しにつながるからです。
豚肉の炒めものにシトラスの香りを添えて
こうした薬膳理論で夕食にさっと作ってみたのが「シトラス風味の青椒(ちんじゃお)ポーク」です。
柑橘類のシトラスの香りだけでなく、生姜の香り、ピーマンの香り、舞茸の香りも総動員しました。
視覚的な癒し効果も考えて橙色のいよかんと緑色のピーマンの補色を使い、安定感を生むカラーセラピーの要素も含んだ薬膳フードセラピーです。
これならお台所に特殊な中薬がなくても、どんなご家庭でも簡単に作れますよね。
義父が「うまいっ!」と小さく声をあげて、ビールを片手にお料理に箸をのばしていたので、わずかなお食事タイムに少しほっとした次第です。
そして自分は夕食の後に帰宅したのですが、夫はそのまま実家に残って泊まることになりました。
「シトラス風味の青椒(ちんじゃお)ポーク」は食べ残したので冷蔵庫に入れておきました。
夫によると翌日の朝ごはんに夫が介助しながら、義母にこの料理を食べさせてくれたそうです。
なんと驚くほど、おいしそうに食べてくれたとのこと。
しかし、その後のお昼ごはんから義母は全くお食事が摂れなくなってしまいました。
ですから、これが義母が最期に味わった家庭料理となりました。
このように「薬膳レシピ開発力」は、生まれてからイノチが燃え尽きるその手前まで、健やかな身体を保ち、ココロ豊かな人生を謳歌するのに生涯役立つ一生モノのスキルです。
少ししんみりした話題となりましたが、そのコトをお伝え致したく、若いイノチが萌えあがる春の桜シーズンを前に、薬膳フードセラピーの真髄について書かせて頂きました。
このように薬膳レシピを組み立てる考え方は、介護ストレス以外のココロのケアにも応用できます。
受験シーズンやお仕事でのストレスを軽くしたいときなど、ご自身やご家族の心身のケアに、様々なアレンジで活用して頂ければ幸いです。
ココロを癒す薬膳レシピ開発例「シトラス風味の青椒ポーク」
このようにココロを癒す薬膳「シトラス風味の青椒ポーク」は終活サポートの家庭薬膳として供した一品です。
もともと終末の看護をしていた義父のストレスを和らげるために作った薬膳でしたが、翌日その残りを食事が摂れるかどうか分からなかった義母への食事療法にもなりました。
香りのよい食材にはココロに働きかけて精神面を安定させる働きがあるほか、体内の気(エネルギー)の流れを改善するのでいよかんを選択。
気血(きけつ)は一緒に流れるので、香りの薬膳食材は気血をチャージする肉類を組み合わせると、身体に滋養を巡らせる効果が得られるため豚肉と組み合わせています。
「薬膳の知恵は命が尽きる最期のさいごまで、食べる喜びをこれから旅立つご本人や、介護をしている家族にも届けることはできる。」
自分にとって、こうした確信につながる貴重な経験となった家庭薬膳、中医学の食事療法です。
一見簡単な家庭料理炒め物ではありますが、義父にも、義母にも、夫にも食べてもらえて本当に嬉しかった手作り薬膳です。
薬膳レシピ開発の考え方とカンタンな作り方をご紹介しますので、同じようなご経験をされている皆さまのお役に立てば幸いです。
材料(4人分):
豚ロースのこま切れ 200g
A 日本酒 大1
薄口醤油 小1
生姜 10g
玉葱 1個
舞茸 100g
ピーマン 2個
いよかん(かんきつ類)の果肉 1/2個
オリーブオイル 適宜
自然塩 少々
作り方:
①豚肉をAで15分マリネする。
②生姜を皮つきのまま千切りにする。玉葱の皮を除き天地を落として縦半分に切り分け薄切りにする。舞茸をほぐす。ピーマンの天地を落として種を除き切り開いて千切りにする。いよかんの外皮除き果皮を内皮から出してほぐす。
③フライパンに生姜とオリーブオイルを入れて加熱し、玉葱と舞茸を加えてしんなりするまで炒める。
④①の豚肉を加えて火が通ったら塩で調味して、ピーマンを加えさっと炒めて火を止める。
⑤器に盛り、いよかんをあしらって供する。
補足ポイント:
①豚肉にはセロトニンという神経伝達物質の材料となる、必須アミノ酸のひとつトリプトファンが含まれます。セロトニンには精神を安定させる働きがあるので、豚肉もココロを癒す薬膳素材のひとつととらえて、活用するのもよいでしょう。
②レシピ例ではシトラスの香りの薬膳素材として、「いよかん」を使っていますが、その他のかんきつ類で仕上げても結構です。
まとめ 【薬膳レシピ開発】終活サポートにココロを癒すシトラスの香りの家庭薬膳
2022年1月31日に追記。
夫の実家にて、自宅で最期を迎えたいという義母の意思を尊重して、家族で交代交代に介護やお見舞いを繰り返していたとき、終活サポートのため手元の材料でさっと作ったココロを癒す薬膳「シトラス風味の青椒ポーク」を紹介しました。
それは義母が自宅で寝たきりになる直前、最期に食事を摂れるギリギリに間に合って作った香りのよい家庭薬膳です。
薬膳は中医学の理論で作る食事療法です。
中医学では香りのよい食材には心を癒し間接的に体内の循環を良くするので、心と体の両方の働きを改善するという考え方があります。
ちょうど夫の実家の台所に香りのよいいよかんがいくつかあったので、冷蔵庫にあった気血をチャージして元気になる豚肉と組み合わせました。
もともと介護疲れ気味だった義父のため、夕食に作った一品でしたが、翌朝に義母も食べることができた想い出深い最期の食事療法です。
その翌日の午後から義母はほとんど意識がなくなり、それからおよそ半月後に息を引き取るまで食べ物を口から摂れなくなりました。
中医学の食事療法である薬膳の知恵を学んだ者、そして社会に薬膳を伝える仕事をする者として、義母の意識があるうちに家庭薬膳を作らせてもらえたことに、今でも感謝の念は尽きません。
『ナチュラル薬膳生活入門編』
薬膳素材の分類 理気類
みかん(かんきつ類) p.165 参照
須崎桂子
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